特に驚くようなことは何も書かれていません。
戦争とはこういうものです。
だから、駄目なんです。
私達は先ず殺すことをやめるべきなのです。

【IWJブログ・特別寄稿】
パレスチナからのか細い声~パレスチナに通い続ける女性フォトジャーナリストからの報告
(写真家・高橋美香さん)

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 村人たちは、村ぐるみで分離壁反対、占領反対運動をしているが、週に一度の反対デモはイスラエル軍とボーダーポリス(武装国境警察)の圧倒的な武力によって弾圧され、毎週のように怪我人が発生し、運動が始まった2005年以降、過去にふたりがこの村では殺されている。
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 催涙弾、ゴム被覆金属弾、汚水、ガス、実弾と毎週デモの弾圧のために様々な武器が投入される。それだけでなく、運動のリーダー、記録するカメラマン、デモの参加者は、深夜に完全武装で侵入してくるイスラエル軍兵士に連行され、民間人であるにもかかわらず、暴力扇動罪などの罪により軍事裁判所で裁かれ、軍事刑務所に収監される。兵士に投石した少年たちも、たとえ12歳以下の子どもであろうとも容赦なく連行され、法外な罰金を支払わされたうえで「釈放」される。
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 今現在パレスチナの農地は入植地の建設によってどんどん奪われ、自宅の敷地であっても許可なく井戸を掘ることも許されず、パレスチナの土地の上につくられた入植地から取水した豊富な水を使って大量につくり、安価に出荷する「イスラエル産」の農作物に市場を奪われ、農業が立ち行かなくなっている。
 結果として、人々はどこかへ働きに出なければならなくなり、イスラエル社会や入植地での3K労働を担う労働力とされてきた。
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 2002年、イスラエル軍の侵攻があったとき、イマードはまだ働き盛りの35歳だった。この地区のファタハのまとめ役だった彼は、このときイスラエル軍兵士に連行され、壮絶な拷問を受けた。それ以来、徐々に体調を崩すようになり、私が彼に会った2011年には自分で立つことも、ほとんどしゃべることもできなくなっており、ただ1日中虚ろな目をして部屋の隅に頭を抱えて座り込んでいるだけだった。
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 「カマールは、兄弟のうちで誰よりも親思い、友達思いで、優しくて、感受性の強い子。父親がああいう姿にさせられた。友達はどんどん殺されていく。故郷がないこと、土地がないこと、貧困が成長した彼自身にのしかかり始めた。そんななかで、家族を守ること、友達を守ること、不正義を正すことは、彼にとっては武装組織の一員となって占領に抵抗することだという結論だった。でも、私にとっては、どんな武装組織も、民衆のことなんて本気で考えてはいない、民衆の血を利用することでしか成り立っていないと思っている。組織の存続や利害関係や、そんなことのために自分の息子の命を奪われてたまるかと思った。だから、カマールが組織に入るのを阻止した。ありとあらゆる方法を使って」
 マハはそう話した。それは、母親の壮絶な覚悟だった。私は、マハのような人の姿こそを追いたいと思う。その声を記録したいと思う。誰にも拾われることのない、「名もなき」小さな声こそを。
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 私は、できるだけパレスチナの人々に親しみを感じてもらいたい、難しい宗教戦争などでは決してなく差別と抑圧と人々の尊厳の問題なのだということを感じてもらいたい
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 そもそも今回のことの発端は、ヘブロン郊外で入植者の青年三人が何者かに誘拐され、殺されたたことだった。この「入植者誘拐殺人事件」について、すぐに「ダウラトアルイスラミーヤ」という組織が犯行声明を出したが、これは無視され、イスラエルは「ハマスの仕業」だとして、ヘブロンをはじめとする西岸地区全土で「捜索」を開始、それに対する抗議行動を行った青年たちが射殺されはじめた。
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 そして東エルサレムのシュアファットに住む16歳の少年ムハンマド君が「誘拐殺人事件の報復を」「アラブ人を殺せ」と公言する右派の入植者たちに、生きたままガソリンをかけられ、飲まされ、焼き殺された。
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 イスラエル軍、警察による「大捜索」のなかで、事の発端となった「入植者誘拐殺人事件」はハマスの活動家が容疑者とされ、西岸地区では多くのハマスの活動家が連行され、ガザ地区からはロケット弾がイスラエルに飛ばされ始めた。そして、イスラエルは、このときを待っていましたとばかりに、大規模な空爆を始め、民家や学校や病院も標的にして多くの民間人を巻き添えに殺しつづけている。
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 そして日本政府は、よりによってこの時期、7月5日から9日にかけて、イスラエルを訪問して経済協力促進の合意をする茂木敏充経産相を送り出した。武器輸出三原則を廃し、防衛装備移転三原則に看板をすげ替え、イスラエルのような国にも武器、兵器の輸出や関連の技術協力を始めようとしている。まさに、そのことを再確認するためのイスラエル訪問。カネ儲けが一緒にできれば、占領して人権を無視して多くの一般市民の命を奪っている国だろうが構わないのだろう。少なくとも、周囲からはそのようにみられても仕方がない。そういう一歩をこの国は踏み出してしまった。根拠もあやふやな「国益」のために。
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 また、ガザに暮らす、会ったことのないSNS上の友達からもこんなメッセージが届く。
 「僕はもうここで死んでしまうかもしれない。だから君たちに伝えたいんだ。ここで出会った君たちの存在は僕にとって本当に大きな意味を持つもの。ただのSNS友達なんて思ったこともない。大切な存在。みんなのことが大好きだよ」と。
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 自分がひとりではないということが、どれだけ彼らを勇気づけているかということをほかのパレスチナ人の友達からも何度も聞かされてきた。みんなが繋がろうとしてくれている、みんなが見守ってくれている、自分はひとりで闘っているわけではないと思うことこそが、最大の勇気になるのだと。
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仲介をしようと試みたのが、アメリカからの軍事援助に首まで浸かった、国境の閉鎖を通じてイスラエルによる封鎖の求めに応じて協力しているエジプトのシシ政権だということを忘れてはならない。
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 そして現地時間の17日夜、イスラエル軍の地上侵攻が始まってしまった。民家だけでなく病院や学校も空爆の対象になっている。ピンポイントで攻撃できる「能力」のあるイスラエル軍が、病院や民間人を避ける「能力」がないはずがない。「もう、いったいどこへ逃げろというの?」という悲鳴のような声が現地からまた届いた。
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 世界で飛び抜けた軍事力をもつ、唯一の軍事超大国・アメリカと強固な関係を維持していれば、どれだけ罪なき人々の命を奪っても、国際法を無視しても、何をしても「自衛」として許される。イスラエルは、横暴を重ねることで、そうした不条理な国際社会の現実を見せつける。
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 一方、国なき民は、自衛にもならない自衛を試みようとするたび「テロリスト」と断罪され、虐殺される。対岸の火事ではなく、今だからこそ、私たちも「自衛」という言葉の意味を、集団的自衛権の行使を、真剣に考えて議論していく必要がある。
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恐怖という理由     2007/01/15
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